セクシュアルハラスメントへの意識改革はずいぶん進んできていますが、それでも年配の患者のなかには、看護師を見かけると、つい外見に関することを言いたくなってしまう人も見受けられます。たとえば、「前と比べて太ったんじゃない」とか「今日はいつもとメイクが違うね」などもです。それは緩和ケアの患者だからといって許されるということではありません。
このような患者に対して「それはセクハラですよ」と恥ずかしそうに言っても逆効果になることがあります。このようなコミュニケーションにおいて、相手はセクハラ発言に対する看護師の反応を楽しんでいる部分があるからです。つまり、恥ずかしそうなリアクションは、相手の思うツボなのです。
対策としては、オーバーなリアクションをしないのがベストです。軽く不愉快な表情をして、知らん顔をするか、にっこり笑って聞こえなかったふりをすればいいのです。しかし困ったことに、セクハラ発言をしてくる患者に限って、プライドが高い傾向があります。そのため正面きって「失礼ですね」「病院内で噂になってもいいんですか」などと相手を追い詰めるような発言をするのは避けましょう。あまりきつい調子で不快感を表すと、相手は面子をつぶされた屈辱感もあって、さらにエスカレートする可能性もあるからです。
基本的に外見に関する発言は、あまり取り合わず、淡々と聞き流し、普段通りの表情で接することが推奨されます。患者のほうも自身の発言を見事にかわされると、かえってセクハラ発言をした自分のことを恥ずかしいと感じるはずです。